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イスラーム以前の時代では、離婚は男性の独断によって女性に対しての武器として利用されていました。彼が妻を害そうと望めば離婚を求め、よりを戻そうと望めば自由にそう出来たのです。そこには何の規制もなく、女性には何をしようにも権利がありませんでした。それゆえアッラー()は、次の節を啓示することによりこういった不正を無効とされました:
離婚は二度までである:その後は公平な待遇で同居(復縁)するか、潔く別れるのだ。 [2:229]
たとえ何らかの相違が発生しても、預言者()のスンナ(道)に従うムスリム男性は、自分の妻が月経の状態でない時で、かつまだその月に性交をしていない状態のみにしか離婚することが出来ません。これは結婚関係が維持される英知です。これにより、離婚の宣言をするまでに一定の待ち時間が必要となるため、双方の怒りを静まらせ、誤解を解き、他の家族または仲裁人に調停をさせる時間を与えます。もし彼らがそれでも離婚の道を進もうとするのであれば、彼女は三つの月経期間を待たねばなりません。彼はこの期間によりを戻し、名誉ある婚姻関係に戻ることを選択することも出来ます。これは最初の離婚と復縁に数えられます。もし一定の期間が経過し、彼が彼女と別れたのであれば、彼女にとってはそれが最初の完全な離婚となり、別の男性と結婚出来るようになります。そしてもし双方がそう望むのであれば、彼女の最初の夫は新しい契約をもって彼女と再婚することが出来ます。そして彼がそうした末、再び彼女を離婚したのであれば、彼女の三回の月経期間内であれば復縁することが出来ます。しかしそうせずに完全離婚した場合、それは二度目の離婚と復縁と見なされます。二度目の離婚と復縁の後、彼が彼女と三度目の離婚をすれば、それは最後の離別と呼ばれ、女性が三回の月経期間を待ち、前夫との合法的な再婚を意図することなく別の男性と結婚するまで、双方が再婚することは出来ません。もし何らかの理由によって、彼女がその男性に離婚されたのであれば、この規則を掻い潜るようないかがわしい事前の打ち合わせなどがなかったことを条件として、彼女は最初の夫と再婚することが可能になります。これら全ての措置は、家族の保護と尊厳ある婚姻関係、そして男女の権利を助ける目的を持っています。待ち期間は、彼女が妊娠してはいないかどうかをはっきりさせます。もし妊娠していた場合、別の夫と結婚する前に、女性は出産を待たねばなりません。
イスラームにおいて離婚が最終的に認められているのは、和解の不可能な状況で生じるあらゆる害から逃れるためです。特定の事例において、離婚は必要となるのです。離婚には、それに関わる当事者である夫、妻、そして子供たちの利益と権利を守るための厳しい規定があります。それらの一部は既述されました。
一方で、離婚が問題の解決をもたらさず、必要とされる利益に反して夫婦の一方に過度な困難を引き起こす恐れがあれば、離婚が禁じられる場合もあります。
イスラーム法は、夫婦間に重大な論争や相違が発生した際には、離婚を避けるための解決に努めなければならないことを義務付けています。至高なるアッラーは聖クルアーンにおいて仰せられています:
もしも女に、その夫から虐待または遺棄される恐れがあるのなら、両人の間に和解を取り付けることは罪ではない。そして和解はより良いことである。 [4:128]
また至高なるアッラーは、このようにも仰せられています:
もし汝らが両人の破局を恐れるならば、男性側(の一族)から一人の調停者を、また女性側(の一族)からも一人の調停者を指名せよ。双方が和解が望むならば、アッラーは彼らの間を調和されよう。実にアッラーは全知にしてすべてを見透す御方である。 [4:35]
良い結婚関係を維持する最も自然かつ論理的な方法の一つとして、女性ではなく男性が離婚の過程におけるより強い統制力を持つということがあります。なぜなら男性こそが妻と家庭を経済的に支える義務を有し、彼らの福利に適うことを選ぶ最終的な責任があるからです。従って、彼は離婚のもたらす重大な結果である経済的・感情的な大きな損失を考慮した上で、理性的に状況を見極めなければなりません。夫は離婚によって、婚姻に費やした結婚の際の贈与財を失うばかりか、妻への扶養と子供の養育費、更にその後の新しい結婚生活の支払いも抱えることになります。それゆえこれら全てを考察すれば、彼は怒りや感情に任せたとっぴな選択をすることはないでしょう。
少なくとも理論上では、男性の方が妻との口論などといった比較的小さな問題における個人的な反発や行き交う感情に対するコントロールなどの面で、より大きな包容力を持っているとされます。離婚とは、一時の困難や意見の相違になどに対する性急な判断であっては決してなりません。それは両人が、お互いに対する品行方正な態度としてアッラーと預言者が定められた掟に従うことが出来ないと恐れる程、問題が危険な領域に入っているか、または人生が堪え難いものになってからのみ行なわれるべき最終的手段であり、解決策であるのです。
もし夫が妻を身体的、または精神的に虐待するのであれば、イスラーム法は妻による婚姻関係の無効化の要請を許可します。また彼女は、以下のような一般的理由によっても婚姻関係の無効化を要求する権利を持っています。
もし夫が性的不能で、夫婦間の義務行為を果たせない場合。
または何らかの理由により夫が性行為を拒否し、彼女の合法的なニーズを満たさない場合。
または結婚後、夫が末期症状の病気にかかり体が不自由になった場合。
またはある種の性病もしくは生殖器官の病気を患うことによって妻を害する恐れが発生するか、彼女に夫と同居する願望がなくなった場合。このように、男性が離婚を求めることが出来るのと全く同じように、女性にも合法的な理由に基づき、多くの状況でにおいて夫との離婚を求める権利が与えられていることが分かります。もし妻が忍耐の限界に達し、夫のことをひどく嫌悪したり、人生が堪え難くなったと感じるのであれば、彼女には離婚の権利があるのです。こういった形で行なわれる離婚は無効宣告、あるいは“フルア”と呼ばれ、彼女は賠償金として結婚の際の贈与財を返却するか、その他の資産を支払うかします。もしも夫側が妻の要請を拒否したのであれば、適正な資格を有するムスリム裁判官が各自の事例を調査し、その要請が適切、合法であるとされれば、女性を支持する判決が下されることになります。